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ネパール人の友達の思い出

ネパール人の友達の思い出_a0097288_1535925.jpg


「私は日本に行きます。」

ネパール人青年アマルからの手紙には確かにそう書いてあった。

彼と文通を始めて数年たった大学二年の初夏の事だった。

どんないきさつで彼が日本に来ることになったのかは知らないが、目的は出稼ぎだ。

ある日アパートの電話が鳴った。

「ノコ?」

アマルからだった。

「ワタシハイマ、ニホンニイマス。」

初めての英語の電話。
全く言葉が出てこない。 ただでさえ英語は大の苦手なのに顔が見えない電話のなんと難しいことか。
少しの会話でも途方もなく時間がかかった。

「日本の友達はあなただけです。私を色々助けて下さい。」
「 会いたいです。いつにしますか。」

私が言葉に詰まると

「ノコは声がかわいいね。」
「うれしいな。ボクはラッキーだ。」

そんな言葉で話の間を持たせている。
まだ若い私は英語で囁かれるそんな言葉にもドギマギして余計に言葉が出てこない。

要は、怖いのだ。

得体の知れない外国人。しかも途上国の。
貧しい国から日本にやって来るということは、相当のやり手かギラギラと野心に満ちた向こう見ず。

文通だけならいいが、実際に彼は日本に来て、私を頼っているのだ!

うまく断る図々しさも英語力もない。
私は彼と会う約束をして電話を切った。

待ち合わせた場所に現れた彼は目が大きく鼻は丸く、肌は浅黒く、背は低いががっしりとした男だった。
東南アジアでもない、インドでもアラブでもない、異国の顔の男。

会ってみた彼は実直でひかえめな男だった。
何を話したかは覚えていない。

それからほぼ毎日、彼から電話がかかってきた。
毎日1時間、他愛のない話を苦労して。
おかげで少しは英語に慣れたが、私にとってはとても大変で楽しい時間ではなかった。

彼には何度会っただろう。

三度目くらいか、ネパール人は二人に増えた。

アマルの友達が日本にやってきたのだ。
彼はアマルとは似ても似つかない男だった。
スリムで背が高くお洒落な男。性格は明るく、狡猾で軽い感じ。

弟分のアマルをぐいぐい引っ張っていき、物事を楽々とこなすその友達を、アマルは頼りにしているようだった。

どう考えてもネパール人としてはスレているその男を私は気に入らなかった。

おとなしいアマルが日本で職を得て生活していくにはこの男の手助けが必要だろう。
しかし私はこれからしたたかに、そして少しずつ薄汚れていくであろうアマルとネパールの清々しい山々のイメージとのギャップに、なんだか空が曇っていくような気分になった。

それからだんだんと電話は少なくなり、いつしか連絡は途絶えた。

アマルが今どうしているかは知らない。
by nokonokoblog | 2008-01-31 09:58 | 旅の思い出
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